【書籍紹介】支援者支援養育論:子育て支援臨床の再構築

現在通っている日本社会事業大学の研究大学院の藤岡先生の著書。支援現場の方々には是非ともおすすめしたい一冊。
支援者支援というのは僕が学童保育で働いていた頃からずっと考え続けていたテーマでした。僕が福祉に携わるようになってから実際に見聞きしてきた範囲だけでも子ども関係の職場では心身をすり減らしバーンアウト、離職していく方々が後を絶ちません…。
子どもに限らず福祉の現場は過酷です。それでいて未だに精神論、根性論で弱音を吐いてはいけないとか、専門職なのだからという理由で厳しい叱責を受けるような現場も少なくありません。そうした環境がミスをしないこと、批判されないことばかりが目的化した硬直的、制限的な支援や果ては支援者による虐待を助長していく。そして社会的非難を受け更に傷ついていく。なんでこれだけ想いをもった人たちがここまで傷つき、倒れていかなければいけないのか。そうした話を見聞きする度にいつも憤りを感じていました。
この書籍では実親や施設、里親、児相職員が子どもと関わる上で避けられないこうした傷つきの問題や虐待臨床場面の難しさについて海外の先行研究等に基づき丁寧に解説されています。
子どもと関わるうえでの支援者が抱く辛さ、葛藤。こと子ども虐待に関わる場面ではしばしば子どもが受けてきた傷つき体験の再現が起こる。それにより支援者自身が虐待者と同じように子どもを傷つけてしまうこともあれば逆に子どもから傷つけられてしまうこともある。そうして傷ついた支援者が心身を害して離職や支援現場内での対立、混乱につながり結果、支援が不安定となるという悪循環。福祉の性質上なかなかできていることが内部からも外部からも評価されにくい。なかなか達成感等にもつながりにくい構造。
だからこそ子どもと関わる支援者の支援が理論として体制として構築されて初めて子どもの支援が成り立つということが説かれています。
子どもではなくて支援者の側に立つのかとか、そんな軟弱な人に支援を任せるのがそもそもの間違いみたいに言われることもあります。でもそうしていかないと結局子どもも守れない。支援者だって支援が必要。支援者が元気でいられるからこそ、子どもの声もじっくり聞くことができるし、支援の幅や柔軟性も生まれていく。
今もなお後を絶たない支援者による権利侵害が後をたたないのは、支援からこぼれる子ども達がいるのは私達が支援者を大切にして育ててこれなかったからではないのか。そうした事柄に目を向けずにスーパーマンのような優秀な人材を求め続けるのはいい加減やめにしませんか。どんなに優秀な人でも大事にされなければ結局つぶれていきます。
子どもも支援者もみんなが大切にされる。それが当たり前になっていくことを願います。