社会的養育経験者へのアフターケアの実情についての整理

社会的養育経験者へのアフターケアの実情。施設や事業毎の差異について着目して整理してみる。


大前提として実はそれぞれの施設や事業毎に昔からアフターケアのための取組自体は行われてきている。ただ、それがなかなか持続的・標準的なものにはなっていないし、それでも取りこぼしてしまう若者もいるのが実情。なので報道等でアフターケア自体が全く行われていないみたいに言われるのはモヤる。また一方で全国の実情を見聞きすると地域格差が激しいのも事実。


児童養護施設退所者の自立に向けた支援やアフターケアの脆弱さはよく話題にあがるけれど、それでも社会的養育の中では比較的取組としても制度としても充実している方だったりもする(もちろん施設間の格差も激しくて皆無に等しい施設もあるので一概にはいえないけれど)。


よく里親家庭であれば措置解除後も継続的なつながりが期待できるみたいにも言われるけれど、それって制度的な裏付けがなされているものではなく里親さんの善意に頼ったものにすぎない。実際のところは里親家庭での自立に向けた支援やアフターケアもかなり格差があるし、関係性が悪化した場合のリスクは施設よりも大きい。


児童自立支援施設や児童心理治療施設の中にはアフターケアに力を入れているところもある一方で、公設で措置解除後の関わり自体が民間施設に比べてやりにくかったり、施設自体が義務教育年齢までの関わりを原則としているため自立後を想定した関わりが難しいという実情もある。


障害児施設は特別支援学校との連携や障害者総合支援法上の地域移行支援の仕組みがあるので他施設と比べればこのあたりのサポートは充実しているともいえる。ただ、児童福祉と障害福祉との間での仕組みや文化の違いによるすれ違いが起きがちだったり、障害の程度・内容によっては仕組みにフィットしない若者も少なくない。


自立援助ホームは本来アフターケアのための事業だったけれど、現在は利用ニーズが変容・多様化して実質インケアに近い役割が求められるようになりがちで、もともと施設よりも限られた予算人員配置なので運営的に厳しいのが現状。
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子どもシェルターに至っては性質上、そもそも充実したインケアやアフターケアは期待できない。担当弁護士がアフターケアも担うみたいにいわれるけれど、ケアの専門ではないし、これも結局弁護士個人の善意に頼ったもの。実際は個人差も激しかったり、若手の先生を中心に疲弊する声も聞こえてくる。


退所児童等アフターケア事業や社会的養護自立支援事業がこれらの社会的養育施設等と連携、サポートしてアフターケアを補い合っていければ良いけれど、これらの事業は補助事業ゆえに予算も人員配置も更に脆弱だし運用もまばら。


こうした各施設や事業所の事情も踏まえたうえでどのように社会的養育におけるアフターケアを標準化していけば良いか。はじめから民間の善意をあてにするのではなく、公助の保障としてどのような仕組みを描いていけば良いか。主体ベースで考えていくのは限界がみえているので地域システムの視点から考えていきたい。