リスクマネジメント

大学院の授業、今週からはリスクマネジメントについて。リスクマネジメントは弁護士としては馴染み深いテーマだけれど福祉人としてはまだまだ学びが足りない。
ただ弁護士としてのリスクマネジメントは法令や裁判例の規範を想定したものなのでそれを前提にゴリゴリのリスクマネジメントを徹底しようとすればするほど現場の運用は保守的・硬直的になりソーシャルワーク実践が難しくなる。福祉の現場で日々接する人たちは様々な理由に枠組にハマりにくい、こぼれやすい人たちであり、マニュアル通りやっていたらこぼれ落ちてしまうような人はたくさんいる。
権利擁護の観点から言っても悩みが尽きない。リスクマネジメントを徹底して安全を優先しようとすればするほど「管理的」といって批判される。かといってリスクをある程度是認した結果事故が起きればそれはそれで責任が問われる。こういうかゆいところは国の指針や裁判例でもざっくりとしか書かれていないし、偉い人に聞いても属人的すぎて再現性ないアドバイスか高度に抽象的なアドバイスしかかえってこない。結局このダブルバインドやコンフリクトで現場はいつも苦しむ。
 弁護士もこういう判断はあまり慣れていない。むしろ現場を余計に混乱させるような「助言」だけ残していくような先生もいる。
しかも弁護士会の関連委員会でそこそこ名を馳せているような先生がこういうことをやりがち。福祉現場での弁護士の言葉はめちゃくちゃ重たく受け止められるので、弁護士が軽い気持ちで言ったことでも大事として受け止めて過剰な対応を招いてしまうこともある。なので僕もこの辺りは助言を求められたときにはいつも気をつけてなるべく福祉現場の言葉に置き換えて誤解なく伝えるようにしているし、余計なことは言わないようにしている。
結局、今の法制度の中でより良い支援を目指していくには現場がある程度の不確実性やリスクに耐えられる前提で、ときには進んでリスクを犯すような英断も前提にしたリスクマネジメントを構築していかないといけない。でもそれだけの判断と体力がある現場が現実にどれだけあるか。日々苦しむ現場の助けにあるようにこのあたりはもっと突き詰めて理論化していきたい。