自治体内弁護士の可能性

明石市の自治体内弁護士の記事。とても共感する内容だったので紹介。僕も児童相談所の勤務弁護士として自治体内での仕事に関わらせて頂いていますが、記事で書かれているようなやりがいや課題意識を日々感じています。
よく児童相談所に関与する弁護士は常勤職員が良いのか外部契約が良いのかというような議論がされますが私見としてはそれぞれが果たす役割が全く異なりどちらがより優れているとか、どちらかが代替できるような性質のものではないのでこうした比較議論自体適切ではないと思います。
そうした考えを前提として、自治体内では働いている立ち場として言えるのはやはり外からの関わりには限界があると思います。
例えば自治体の外からの関わりでは年間せいぜい数十〜百件のケースに触れるのがやっとですが、こうした相談機関の中で年間数百〜千件のケースに触れることができて見える景色も全く異なります。
おそらく普通に法律事務所で仕事をしているだけではこれらのケースを採算性もってこなすことはできないでしょう。
今までは決して接することのなかったような狭間の相談、様々な事情から外の法律事務所や法テラスの弁護士相談につなぐことすら困難な相談。
裁判等の解決には馴染まない予防的ニーズの相談、行政の立ち場だからこそ接することができる類の相談に触れられるのはまさに自治体内弁護士の醍醐味だと思います。
また、そうして接した相談から既存の制度の課題、改善点を浮き彫りにしやすく、制度や運営改善に向けてのアクションが起こしやすくクリエイティビティを秘めているのも魅力です。
それは弁護士がわざわざやるべき仕事か、一般の行政職員がやるべき仕事ではないかというような指摘をされることもあります。
確かに本来的には弁護士固有の専門性に属するようなものではなかったり、行政職員ひとりひとりがあたりまえにこなさなければいけないような仕事も多いでしょう。
でも、社会問題や制度が複雑化する一報でどの自治体も存続自体が危ぶまれるくらい弱っている中で、誰がやるべきかみたいな役割論よりもまずは一緒に交わり汗を流し悩み動いていくことが必要だと感じます。
そうすることで現状打破する新たなイノベーションが生じるのではないかと。
理想としてはすべての基礎自治体の主要相談機関にインハウスロイヤーがせめて非常勤で配置されるのが理想だと思います。
課題としては弁護士法上の非弁規制との境界が非常に曖昧であることや利益相反の問題。これについては世の中の実情や多職種連携が求められている実務事情、昨今の弁護士業界事情を勘案すると弁護士法上の規制自体の見直しも必要ではないかとも感じています。