フランスの児童虐待や児童福祉制度

先日、お誘い頂いた児童福祉に関する研究会でフランス在住のライターの安發明子さんからフランスの児童虐待や児童福祉制度に関するお話を伺いました。
 
「自己責任化」された子どもを救う「路上エデュケーター」という仕事

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フランスは日本と比べて司法関与の割合が強いと聞いていたので少し身構えていたのですが、お話を伺ってみるとむしろとても福祉を大事にした制度設計になっているという印象を受けました。記事で紹介されているようなエデュケーターの制度等も良いなと思ったのですが、なによりもその制度背景にある思想、哲学が素敵だなと思いました。
子どもの意見表明、自己決定の保障を乳幼児の頃からそれも司法の場、裁判官が徹底しているというお話は脱帽ものでした。日本でも児童養護施設等の福祉の場では幼児期からの意見表明を行われるようにもなってきましたが、司法の場では法律上子どもの意向確認が行われるのは中学生年齢、低くても小学校高学年年齢からという状況。フランスでは子どもが自分で自分の意見を言うのが当然という感覚が強いので日本で議論されているアドボケイトのような制度、概念もあまりないとか。
もうひとつ子どもの福祉と同じくらいに親の福祉を大事にしているということが驚きで、日本とは対照的だなと思いました。司法の場においても親が子育てができるように最大限の支援をまず検討する。この親はこれができない、こうしたリスクがあるというウイークネス視点ではなく、こうした強みを活かしてみては、こうした支援を検討はしたのかというストレングス視点を司法の場でも徹底されるというのも素晴らしいなと思いました。
子育てを実親だけが抱え込むのではなく周りの助けを受けながら子育てをするという文化が定着しているから養育者が支援を拒むようなことも薄いとか。日本は子どもよりも親の権利ばかりが優先されると言われがちですが、実際には親権の縛りが強すぎるだけであり、親の支援や権利擁護が充実しているわけでは決してないと思います。
もっともこうした実践も国全体で標準的に行われているものではなく地域差が激しいことや移民、難民問題、格差の問題、ギャング化する若者の問題等も依然として存在していること、そして何より日本とは歴史的、文化的な差異も大きいので一概に比較することはできません。ただ今の日本の政策の流れの是非について考えていくうえでは色々なことを考えさせられます。